【感想】リコリス・リコイル

皆さんご存じの通りのヒット作となった『リコリス・リコイル』。

この美術部には問題がある!』が大好きな身としては、いみぎむるの絵がまたアニメで見られるというだけでもずっと楽しみにしていた作品だったので、それがこうして多くの人に愛されているのは我が事のように嬉しい。

個人的にはこのアニメを見た結果として、「めちゃくちゃ今風のアニメ」という印象を強く抱いたので、今回は「今風」というキーワードを使いながら感想を書いてみる。

 

まず放送前の時点で、一見喫茶店を舞台とした日常系アニメに見せかけて、実はハードな設定とガンアクションが中心というのは、「まどマギ」以降しばしば見られるようになった今風のジャンル設定だと思った。

本作の場合ギリギリまで情報を伏せておくというようなことはしなかったけど、キービジュアル第1弾と第2弾を見比べると、ある程度そういうサプライズや話題作りを狙っていたことが窺える。

 

そして実際に本編を見てみると、今風の生っぽい演技や会話がとにかく印象的だった。

中でも日常会話の間が現実にかなり近く、次回予告動画のかけ合いはその究極と言えると思う。

これを実現するキャストとして、安済知佳なんかはまさしく適任だと思ったけど、ロリボイスに定評のある久野美咲がしっかり適応しているのには正直驚いた。

 

間という点では、特に序盤におけるテンポの速さも今風だと感じた。

1話を見て画面的に面白いと思ったのが、9:15~10:55で見られる、キャラの絵をそのまま動かさずに背景だけを切り替えて場面転換する演出。

千束の普段の活動内容を次々に紹介していくシーンにおいて、このテンポの良い場面展開は効果的だったと思う。

よくある即落ち2コマ的な演出の派生なのかもしれないけど、今まで他のアニメでは見た覚えのない演出だった。

 

ANIMEコンシェルジュ足立慎吾が語っていた、千束の才能が回避能力になった経緯が、今風と言えるかはわからないけど非常に合理的で斬新だった。

まず、もし千束の才能を単に「銃の扱いがうまい」としてしまうと、それを一般的な銃撃戦の中で表現するのは作画のカロリーが高すぎる。

また、TVシリーズのキャパシティで画面を映えさせることを考えると、アクションは接近戦の方が適している。

したがって接近戦による銃撃戦を実現したく、銃でわざわざ接近戦を仕掛ける理由付けとして千束の能力を回避能力にした、ということらしい。

作画の現場をよく知っているからこその考え方だろうけど、千束の才能はアラン機関や真島とも繋がってくる重要なファクターなので、まさか逆算の結果導き出されたものだとは思わずとても驚いた。

 

本作のヒットの特徴でもあるSNS上での異様な盛り上がりは、まさしく今風の現象だった。

作品外の要因としては、「喫茶リコリコ」のTwitterアカウントを作成して本編と連動させたり、いみぎむるをはじめとするクリエイターたちがリアルタイムで積極的な発信をしていたりと、それこそ今風のプロモーションにかなり力が入っていると感じた。

作品内の要因としては、OPの蹴り合いや「さかなー」に代表される、ついつい人と話したくなるようなネタが散りばめられていたように思う。

1クールに何十本ものアニメが放送される昨今、視聴者は単に面白いと思っただけではなかなか発信に繋がらないこともあるので、SNS上での流行を狙うなら「話題にしやすい」という点を意識することも大事なのかもしれない。

 

というわけでざっくりまとめると、めちゃくちゃ今風のアニメが出てきたと思ったらめちゃくちゃ流行った、というのが本作を見ていて興味深かったところ。

もちろん本編も普通に面白かったけど、それ以上にこの作品の存在自体が面白いと思いながら見ている節もあった。

リコリコのヒットを受けて、これから第二第三のリコリコのような作品が出てきたりするのかな、というところも今後注目していきたいと思います。